「絵を描くのに時間がかかってしょうがない」という悩み。
これはよほどの天才ではない限り、絵を描いている人なら、誰しもが通る道かと思われます。
例によって、私もここ5年くらい、この問題についてひっそりと悩んできました。
タイマーで時間を計測したり、机を変えたり…。
それほど大げさなものではないのですが、試行錯誤をしてみた情報を羅列してみます。
「絵を描くスピードを速くしたい」という人は、よかったら参考にしてみてください。
絵を早く描きたいと悩んだ理由
私が絵を描くスピードを速くしたいと思った理由。
それは、なるべく絵を描きたくないから
です。
厳密に言うと、絵を描く時間を少なくしたかったからです。
絵を描くのは時間がかかる
アニメーターさんの過酷な労働環境からもわかりますが、絵を描くのってかなり時間が必要な作業ですよね。
私はアニメーターではありませんが、数年前は、朝から寝る前まで絵を描いていた時期がありました。
そして、そういう生活を続けていたからこそ、わかったことがあります。
丸一日描いていると、疲れが溜まっていく。
そして、次の日の集中力の低下を招いている
ということです。
絵を描く時間が長いと、集中力の低下につながる
「“絵を描く“って趣味の一環じゃないの?」って思っている人も多い中、こういうことを面と向かって書く人はあまりいないかもしれません。
私も最初の2〜3年は、根性で乗り越えていました。
- 集中力がなくなっても、とりあえず机に座ったまま線を引く。
- あるいは、夕方になって焦り始めたころを見はからって、全力を振り絞って描く。
など。
できないことはないですが、今思えばかなり非効率かつ無茶なやり方でした。
もちろん私は、他の人より体力も根性もないのかもしれません。
でも、根性でどうにかできない部分で、いつも周期的に疲れが溜まっていくような感覚がありました。
そこで、「根性や体力でどうにかするのはやめよう」と思い至り、
一旦、きちんと記録をとることにしました。
すると、ある程度の規則性があることがわかりました。
私の場合、朝から寝る前まで絵を描いていると、
大抵5日目あたりから大きな集中力の低下。
そして6日以降になると、もはや机の前に座るのもイヤになり、
1日の生産性がそれまでの半分程度になってしまうこともあった
ということです。
世間で言われているような、イラストレーター、デザイナー、漫画家、アニメーターなど、絵を描く人たちの労働環境からすると、ダメダメな数字かもしれません。
ですが、実は表立って言えないだけで、私と同じような
- 根性のなさ
- 体力のなさ
をなげく人も多いのではないでしょうか。
ちなみにこの体力のなさの解決法として、
私の場合、「○時以上は描かない」と決め、絵を描く時間を短くしたら、次の日に疲れが響かなくなりました。
絵を描くのに時間がかかる理由
つまり、「絵を描く時間を短くすること」は自分の集中力・体力を維持するためにも、生産性を向上させるためにも重要だということです。
ではなぜ、絵を描くのに時間がかかってしまうのか。
ちょっと前置きが長くなりましたが、絵を描くのに時間がかかる理由を書いていきたいと思います。
準備不足
まずは準備不足。
絵を描く前に、
【どんなキャラクターを描くか】が決まっていない
【色の配色】が決まっていない
【背景は何を描くか】が決まっていない
必要なテクスチャ、トーンをインストールしていない
など準備が足りていないままだと、その時々に設定やインストールをする必要があるため、とても時間がかかります。
悩みすぎ
そして2つ目は、悩みすぎ。
いざ絵を描き始めても、悩みすぎると時間はどんどんなくなります。
ポーズや配置などを悩みすぎて、あっという間に時間が経過してた…ということの多さといったら。
資料の探しすぎ
次は、資料の探しすぎ。
絵を描くときに資料をさがす人は多いかと思いますが、あまりにもさがす時間が長くなり、絵をそっちのけでさがしてしまうという人はいませんか。
私もときどきあります。
インプット不足
模写やスケッチなど、日ごろのインプットが不足していると、「こんなポーズが描きたい」とか「こんな物が描きたい」と思っても、サクッと描けずに時間がかかってしまうことがあります。
どんなに基本的なパーツであっても、インプットが不足していると、いつまで経っても上手く描けないんですよね。。
私の場合は、指先とか靴とかですかね。
以上が、描くのに時間がかかる理由でした。
当てはまるものはあったでしょうか。
じゃあ、こんな私たちと描くスピードが速い人とは何が違うのでしょうか。
描くのが速く人のパターン
手グセで描く
これは絵描きにとっては邪道な方法かもしれません。
しかし、手グセで描く人は間違いなく速いですよね。
漫画家、イラストレーターなど、アニメレベルの完璧なデッサンを必要としない業界では、ある程度、手グセで描いている人も多いです。
さすがに名指しはしませんが、ある程度絵を描いている人なら、「あーこの作家さん、手グセで描いてるな」ってわかるかと。
そういう人って大抵、速筆だったりします。
あと、小畑健先生だったか星野桂先生だったかが、パースもそこまで完璧にしていないとか、多少は嘘をつくとかおっしゃられていましたね。
手グセで描いたほうが、味があることが多いからです。
インプット量が多く、速く描くことができる
もともとのインプット量が多いと、アウトプットにも有利です。
速く絵を描く人は、本業とは別に大量のインプットしています。
ナルトの岸本先生なんかは、学生時代からノートいっぱいに手の模写をしていたとか、速筆で有名な真島ヒロ先生もスケッチブック何冊も模写していたとかよく、大量のスケッチエピソードがありますよね。
エヴァのアニメーターとしても有名な吉成曜先生も、ラクガキ集として、落書きとはいえないレベルの絵をまとめた本を出版しているくらいです。
たしか羽海野チカ先生も、毎日絵の練習をしているとかおっしゃられていたような。
つまり日ごろから、本業とはべつに絵の練習をする。
これが大切なのかもしれません。
効率化している
できるだけ効率化している。
イラストレーターさんのメイキング動画などを観ていると、
- ショートカットキー
- コピー+ペースト
がおどろくほど頻繁に使われていることがわかります。
あと、テクスチャもペンを扱うレベルで使っていたり。
つまり、極限にまで効率化しているんだということがわかります。
私のやっている対処法
これらの情報から、私は自分の絵を描く環境を徹底的に変えました。
それは以下の6つです。
①準備は徹底する
まず、準備に時間をかけること。
絵を描く前に資料が必要な場合、きちんと作っておく。
肌の色や、服の色などを決める
必要なテクスチャーを保存しておく
などです。
背景に写真が必要な場合は、先に準備しておきます。
②絵を描く環境をしっかり整える
次は2番目。
絵を描く環境をしっかり整える。
これは仕事として絵を描いている人はともかく、趣味の範囲で絵を描いている人は、案外見逃していることかもしれません。
ようは、絵を描くのがおっくうな日でも描けるように、
机の配置、椅子の高さ、照明などをしっかり整えることです。
私は朝型なので、朝一にごはんも食べずに絵を描くということを習慣にしています。
ですが、これを習慣にするとは少し大変でした。
なぜなら、朝一スマホをいじるのは布団の中で簡単にできますが、朝一で絵を描くのは一度起きないとダメだからです。
すると、夏はいいんですが、冬は起きられません。というよりも、起きられるには起きられますが、少し時間がかかります。
そこで何を準備したかというと、
- タブレット
- 布団用の机
- 防寒具
の用意です。
これらがあると、布団から身体全体を出すことなく絵を描く準備ができます。
私は毎日、この3つを布団から手の届く範囲に準備してから寝るようにしています。
ほかにもアラームや、電気毛布なども必要かもしれませんが、今のところこの3つのおかげで習慣化できています。
ほんのちょっとしたことですが、こんなふうに絵を描く環境を見直すだけで、時間のムダが大幅に削減できます。
ちなみに私が朝一に絵を描いているのも効率化故でして、
起きてからある程度頭が冴えていると「あー描きたくない」とかいろいろ考えてウダウダしてしまうので、頭のぼんやりしている朝一に始めるのが一番効率がいいからです。
これに関しては、恐れ多いですが、あの村上春樹先生も同じことをおっしゃられていました。
③できるだけ効率化する
それから作業はできるだけ効率化すること。この点については前々からやっていたことではありますが、一応書いておきますね。
- ショートカットキーまたは左手デバイスなどを活用する。
- コピー+ペーストできる部分は、なるべくする
左手を使うのと使わないのとでは2倍くらいスピードが違ってきます。
ショートカットキーを覚えられない人は、ぜひ左手デバイスを活用してみてください。
私はデスクトップPCで絵を描くときは、キーボードのショートカットキー、
surface proで絵を描くときは左手デバイスを活用しています。
④ネット上の無料配布素材を活用する
4つ目は、ネット上の無料配布素材があれば、どんどん活用すること。
テンプレート・テクスチャ・背景など、他の人が作った素材を使うことは、時間をショートカットするのに最適です。
もちろん、1から10まで自分で描いて仕上げるのは確かに凄いことですが、そのこだわりは同業者や本人にしかわらかなかったりします。
第三者(お客さん)から見て、不必要なこだわりなのであれば、どんどん素材を作って時間を短縮してみるのもありです。
⑤描くときは考えない
5番目は、考えないこと。
どれだけ準備をしていても、あれこれいろいろ考えてしまうと、結局は時間がかかってしまいます。
私はこれに気をつけるために、
- タイマーをつかって描く
- 手グセで描いてもいいイラストは手グセで描く
ようにしています。
タイマーをつかって描く
タイマーを使うのは、西尾維新先生から学んだ方法でもありますが、もともと学生時代の試験勉強で活用していたからです。
- 〇〇分集中
- 〇〇分休む
を繰り返すと、どんなに嫌なことでも、集中力が続きやすくなります。
例として、私は学生時代、この方法で、10時間以上試験勉強をしていました。
あとから知った話ですが、これをポモドーロテクニックと言うそうです。
手グセで描いてもいいイラストは手グセで描く
そして、手グセで描く。
これは全員に勧めるようなことではありませんが、これを始めてからスピードが速くなりました。
ようは力の抜き差しです。
⑥インプット量を増やす
①〜⑤を取り入れたことで、絵を描くスピードは格段に速くなりました。
少なくとも、どんなにスケジュールが押しても、以前のような「寝る直前まで絵を描く」ということはなくなりました。
なので、次はインプットです。
アウトプット(絵を描く時間)で減らした時間を、5分でもいいから、スケッチなどのインプットに活用する。
外出中のスキマ時間は、スマホを見るのではなく、物や人をよく観察する。
などをしたところ、やっぱり速くなりますね。
感覚的なものなので理屈で伝えることはできないのですが、線に迷いがなくなるというか、インプット量が増えて自信が出たせいか、生き生きと描けるようになります。
私の成果
では、これらを習慣化してみた成果はというと、
先ほども少し書きましたが、寝る直前まで描くということがなくなったので、次の日のためのエネルギーがチャージされて疲れにくくなりました。
やはり、私の場合は、休んだ分だけ次の日のエネルギーになるんだと思います。
そして、これがかなり意外だったのですが、
絵を描く時間を徹底的に管理して減らしたことよって、逆に絵を描くことが楽しくなりました。
まとめ
仕事で「もう絵を描きたいくない」と悩んでいる人も多いかと思います。
私もそうでした。気ままに描ける落書きは大好きなのですが、義務的に仕事として1日何枚も何十枚も絵を描くのは全然楽しめませんでした。ええ、5年くらい悩みました。
そういう人は、根性論に流されず、一旦、
- 下準備に時間をかける
- 環境を徹底的に整える
- 効率化できる部分は効率化
- タイマーを使う
- アウトプットの時間を少なくして、インプット量を増やす
など、徹底的に効率化して管理することで、逆に楽しくなる可能性があります。
よかったら参考にしてみてください。